2018年8月10日

「四国素展~芸術資本宣言~ “Resources”case1. 見えない生き物」に寄せて

この世界にはたくさんの生き物が存在しています。どんな生き物が思い浮かびますか?

動物、植物、バクテリア・・・これらはどんなに小さくても、目に見える生き物たち。

でもこの世界には、目に見えないものもあります。

「私」には見えないだけかもしれない。もしかすると、存在に気づいていないだけかもしれない。

 

本展は、「四国素展~芸術資本宣言~」(2018年8月8日~8月12日/高知市文化プラザかるぽーと)に連動した企画です。「四国素展~芸術資本宣言~」は、障がいのある方が日中活動をしたり働く場所である「アートセンター画楽」(高知県高知市)が中心となり、香川・徳島の障害者福祉団体を含む実行委員会と、高知市文化振興事業団が共同主催で行う事業です。「障害のある人々から生み出されるアートは根源的な本能に基づいた“真摯な表現”であり、現代社会の抱える課題を解決していくためのヒントとなり得るResources(資源)である」との考えに立ち、全国の参加施設からの絵や立体造形、映像を展示するとともに、地域活動につながった事例なども紹介します。

当館はその趣旨に賛同し、本展を開催いたします。

今の日本社会には、たくさんの課題が存在しています。課題が解決に至るのは簡単ではありません。しかし、柔軟な考え方をしてみること、視点を変えてみること、立場を変えたものごとの捉え方をしてみること。そういったことが、ほんの少し解決に向かうきっかけになるのではないか。またそれは、自己と他者との違いをおもしろいと感じて互いに互いの存在を楽しむことにつながり、有機的なコミュニティ社会の実現への歩みを進めることになるのではないか。アートを通じた社会課題解決の糸口を探ることを、その考えのもと試みます。

本展では、テーマを「生き物」に絞り、「見えないもの」がアーティストや作り手によって「見えるもの」として立ち現れた作品たちを紹介しています。

見えないけれど存在する、たくさんのもの。音、におい、空気、風などなど…。それらは暮らしの中に常にあるものですが、見えないが故にその存在を気に留める機会はあまり多くありません。また、それらは音符にしたり色を付けたりするなどで、目に見えるようになることがあります。見ようとしてみる、考えてみる。ほんの少し違った角度からアプローチしてみる。そんなちょっとしたことが、存在への気づきや存在そのものを実体として捉えることにつながります。それは、日常を変える可能性を秘めるとともに、何かの課題に向かう時に大きなヒントを与えてくれる一つになり得るかもしれません。

また、本展で紹介している作品は、アーティストや作り手個人の感覚を通じ、表現されたものです。感覚は人によって様々です。この文章を読んでいるあなたの感覚と大きく離れていることもあるでしょう。自分と違うその感覚は、もしかしたらあなたにとってはちょっぴり“へん”かもしれません。けれど、ちょっぴり“へん”はあなたに新たな感覚をもたらし、気づきを与えてくれます。そして、その新しい感覚が生活の中にわくわくする機会を増やしてくれることでしょう。

すべての感覚をひろげ、ちょっぴり“へん”を楽しんでみる。

本展を通じ、そのような体験をしていただければ幸いです。

最後になりましたが、本展は四国素展実行委員会との協働で実現いたしました。この場をお借りして深謝いたします。また、本展開催にあたり、貴重な作品を出展してくださいました作家のみなさま、展覧会開催にご協力賜りましたアートセンター画楽、チェルベロコーヒー、日本財団、ist -interior Design、藤井彩加氏をはじめ、ご尽力賜りました関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。

 

2018年7月   藁工ミュージアム

 

主催:藁工ミュージアム

共催:四国素展実行委員会

協力:アートセンター画楽、チェルベロコーヒー、日本財団、ist -interior Design、藤井彩加

special thanks:高松ワークショップLab. 、認定NPO法人 高知こどもの図書館、国見印章堂、rus lab、(有)絵画材料かがやき、(有)ファクトリー、(株)高知大洋工芸